人工知性を作りたい

私が日々、挑戦したことや学んだことなどを紹介していく雑記ブログです。 (新しいAI技術HTM, 専門の音声信号処理, 趣味のアニメ等も書いてます。)

私の研究テーマ「片耳難聴者のための音の方向知覚訓練」

どうも、こんにちは!

今回は私の学部時代の研究テーマについての紹介を行いたいと思います。

プロフィールにも書いている通り、現在私は大学生なので、実際大学生がどんな研究をしているのかを参考程度に紹介していきます。

 

研究背景

片知難聴者とは?

片方の耳が聞こえず、もう片方の耳は聞こえる状態の方を指します。

片方の耳は聞こえるため、生活に不便なことはたくさんあるが、障害者手帳などはもらえないといった苦労もあるようです。

そこで、私はこのような方がもっと安全に、楽しく生活できるような未来を作るために片耳難聴者を対象とした研究を進めることにしました。

 

片知難聴者の課題

片耳難聴者が持つ大きな課題としては、

・音に対する方向感が分からない

・騒音内での聞き取りが困難

 

現在の改善方法

・CROS補聴器(聞こえない側の音を聞こえる側に届ける)

・BAHA(埋め込み型骨伝導補聴器)

しかし、これらの改善方法でも音の方向感は改善されないといった課題が残っています

 

そこで私は、片耳難聴者が音の方向感を改善するにはどうすればいいのかについて先行研究調査を行いました。

 

先行研究

片耳による定位(安藤四一、森本政之ら)

・正常な被験者の右耳を塞いで方向感の訓練を行なった場合、水平面音像定位が改善できた。(水平面=横)

・永年片耳難聴者は、スペクトル情報を用いて音像定位が可能である。

※スペクトル情報とは、頭部の回折や耳介の形などにより変化する。

 

よって、私はこの先行研究から

スペクトル情報を持つ音源を用いた訓練を行えば片耳でも音の方向感はわかるのではないか?という仮説を立てました。

 

 

研究目的

「家庭で簡単に方向感の訓練を行えるシステム開発

 

従来法では、防音室でスピーカーを自分の周囲360度に並べて実験を行なっていました。しかし、それでは訓練をすると成った時に気軽にできません。そこで、私はヘッドホンを用いてスピーカーと同じような結果が得られれば家庭で簡単に方向感の訓練を行えるシステムが開発できるのではないかと考えました。

検討内容

「ダミーヘッド(片耳)を用いた録音音源でのヘッドホン聴取による訓練効果の検討」

 

ダミーヘッドと呼ばれる人形を用いて録音することで、立体感のある音が録音できます。そこで、この技術を用いればヘッドホンでも音の方向がわかる⇨つまり、ヘッドホンでも訓練ができるのではないかと考え、実験を行いました。

 

実験方法

評価オンの作成

ダミーヘッドで録音を行い、7方向の音源を作る。

方向感には周波数情報が必要なので、全周波数帯域を持っているホワイトノイズで実験を行なった。

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実験手順

まず、訓練前に片耳の音像定位実験(音がどこから聞こえるか)を行い、提案法の訓練を行なった後、もう一度音像定位実験を行い、どれくらい改善したかをみた。加えて、途中経過を見るために一度、訓練中にも音像定位実験を行なった。

 

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訓練の流れ

被験者に音を呈示し、どこから聞こえてきたかを回答してもらう。間違いだった場合には正解の方向を教え、もう1度音を呈示して学習してもらう。それを繰り返す。

 

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音像定位実験

被験者は20代の健聴者で行なったため、両耳に耳栓をつけてもらい、音を呈示して、聞こえていないことを確認の後、片方の耳栓を外してもらい実験を行なった。

7方向のスピーカからランダムに音を呈示して、どこから聞こえたかを回答してもらい、音像定位能力を測定した。

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実験結果

グラフの見方

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被験者Bの結果

訓練前では左側(耳栓側)の定位にばらつきが見られた。

しかし、訓練ごでは綺麗に定位が行えている。

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被験者Cの結果

訓練後、右側の定位は綺麗に成った。

また、左側の定位にばらつきは見られるが、右側と回答することがなくなった。

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まとめ

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以上で紹介は終わりです。私自身ヘッドホンでの訓練は可能だと思っております。しかし、この研究の信頼性を高めるためには実際に片耳難聴者の方で実験を行わなければならないと言われまして、私も同様に考えます。そこで現在私は、この実験から離れたのですが、この記事を読んだ方が面白いと感じてこの研究を続けて下さればありがたいです。私も将来機会があれば方向感訓練の研究を行なっていきたいと思います。

 

ちなみに、今回の対象が片耳難聴者の方でしたが、対象を野球選手にして考えて見ると、一流の外野手などは打球音からボールの方向を判断し、いち早くボールの落下点までいけるそうです。

このように、対象者や状況を変えて見るとこの研究の意味も広がっていくのではないかと考えます。